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テイクアウトの箸、2本目以降を有料にしていいのか — 法律ルールと、お客様への伝え方

テイクアウトの箸を2本目から有料にしていいのか。法律上のルールから、お客様への伝え方、業態別の向き不向きまで、炎上せずに導入するための実務ポイントを整理しました。

テイクアウトの箸、2本目以降を有料にしていいのか — 法律ルールと、お客様への伝え方

結論を先に書きます。

割り箸の有料化は完全に店の自由で、法律で禁止されている話でも、義務化されている話でもありません。「2本目以降は10円いただきます」と決めて運用するのも、ルールとしては全く問題ない。

ただし、お客様への伝え方を間違えると、SNSで「あの店、箸も有料」と否定的に拡散されるリスクもあります。導入するなら、運用の作り方が大事です。


まず、よく混同される「プラスチック資源循環促進法」との関係から

2022年4月に施行された「プラスチック資源循環促進法」(通称プラ新法)で、飲食店・テイクアウトで提供するプラスチック製品の使用削減が義務付けられました。

ただ、この法律で対象になっているのは5品目だけで、

  • フォーク
  • スプーン
  • テーブルナイフ
  • マドラー
  • 飲食・飲料用ストロー

箸は対象外です

理由は、市販されている割り箸の多くが木製・竹製で、プラスチック製品ではないから。一部の樹脂製箸は対象になり得ますが、テイクアウトで一般的に使われている割り箸はプラ新法の縛りを受けません。

つまり、「箸を有料にしないといけない法律」も「無料で提供しないといけない法律」も存在しない。完全に店の判断ということになります。


「2本目から有料」の運用は、実は理にかなっている

割り箸を有料化することに反発するお客様もいますが、運用の仕方によっては合理的な選択です。

箸のコストを実際に計算してみると

割り箸1膳あたりのコストは、安いもので1〜3円、品質のいいものだと5〜10円くらいです。月3,000食のテイクアウトを出す店なら、

  • 1食あたり1膳: 月3,000膳 × 3円 = 9,000円
  • 1食あたり2膳に増えると: 月6,000膳 × 3円 = 18,000円

月9,000円の差。年間で約11万円のコスト差です。

「家族で食べるから2膳ください」「予備にもう1膳お願いします」というお客様が増えると、知らないうちにこのコストが膨らんでいる店は多い。

運用としての「2本目から有料」

実際に飲食店で取られている運用は、以下の3パターンが多いです:

  1. 1食につき1膳が原則: 2人前を注文すれば自動的に2膳。それ以上は申告制
  2. 2本目以降は申告制 + 有料(10円〜): お客様が必要なら自分で意思表示
  3. 完全申告制: 「箸は必要ですか?」と毎回確認、希望者のみ提供

どれも合理的ですが、お客様の心理的負担が違う。3が一番箸のコストを削減できるが、お客様からは「ケチ」と思われるリスクが最も高い。1か2のバランスがおすすめです。


お客様への伝え方が、結局のところ全て

箸の有料化で炎上するかどうかは、金額の問題じゃなく、伝え方の問題だと思います。

「2本目は10円」と書いてあっても、文脈次第で受け取り方が変わる。

良くない伝え方の例

箸の2本目以降は有料です(10円)

これだけだと、「ケチくさい」「セコい」と感じるお客様が出ます。

いい伝え方の例

環境保護のため、お箸は1食につき1膳とさせていただいています。追加が必要な場合は1膳10円で承ります(売上は森林保全団体に寄付しています)

または:

プラスチックや木材資源の削減にご協力ください。お箸は1食1膳が基本ですが、ご家族での共有用などで追加が必要な方はお申し付けください(2本目以降10円)

ポイントは、「店側のコスト削減」を表に出さないこと。表向きは「環境配慮」「資源削減」の文脈で伝える。これだけで、お客様の心理的反発はかなり減ります。

実際、コンビニやスタバが進めているプラスチック削減施策は、ほぼ全部この文脈で進んでます。「コスト削減のため」とは絶対に言わない。


ネット注文との相性も考えた方がいい

ここで実務的な話を1つ。ネット注文システムを使っている店は、箸の数指定をオプション化するのが運用上いちばん楽です。

具体的には、注文画面に:

☐ お箸を追加でご希望ですか? ・1膳追加 +10円 ・2膳追加 +20円 ・不要

のような選択肢を出す。お客様自身が選んでくれるので、レジでの口頭確認が不要になります。

これはレジオペレーションの効率化にも、有料化のお客様説明にも効きます。「画面で自分で選んだ」事実があると、お客様は「無理やり買わされた」感覚を持ちません。

ネット注文システムによっては、こうしたオプション設定機能の柔軟性に差があります。アウトフードのようなテイクアウト特化型は、商品オプション(価格調整付き)を自由に設定できるので、こういう「お箸の追加販売」「割り箸不要オプション」みたいな細かい運用にも対応しやすい。


有料化以外の選択肢

「お客様に直接お金を取るのは抵抗ある」という店向けに、別の選択肢もあります。

1. マイ箸持参割引

逆転の発想で、マイ箸持参の人に「10円引き」をする運用。やってる店は少ないですが、コスト構造は同じ(箸代の削減分を還元しているだけ)。お客様の印象は良い。

2. 申告制+完全無料

「お箸はご希望の方にお渡ししています。レジでお申し付けください」と掲示。希望しないお客様には渡さない。これだけで提供数は2〜4割減ります。コンビニのレシート添付方式と同じ発想。

3. 高品質な割り箸を採用 + 「環境配慮の店」と打ち出す

割り箸を間伐材使用や国産木材のものに変えて、コストは上がるが「環境配慮のお店」というブランディングに使う。客単価が高い店、ブランディング重視の店向けの戦略です。


結論: どの店に向くか

業態と客層によって、向き不向きがあります。

有料化が向く店

  • 高単価業態(高級弁当、こだわり料理、専門店)
  • 環境意識の高い客層(オーガニック系、健康志向、都心の若年層)
  • ブランディングに自信がある店

有料化を避けたほうがいい店

  • 低単価業態(ワンコイン弁当、ファミレス系)
  • 価格に敏感な客層がメイン
  • 「気軽に立ち寄れる店」を売りにしている場合

無理に有料化する必要はありません。ただし、コスト削減と環境配慮の両方の観点から、「全員に2膳渡す」運用は見直したほうがいいと思います。1膳が原則・追加は申告制、というシンプルな運用に変えるだけで、年間数万円〜10万円のコスト削減と、環境負荷の削減が両立します。

「箸の2本目」という小さな話に見えますが、こういう小さな積み重ねが、結局のところ店の利益率を作っていきます。

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