キッチンカーの営業許可の取り方、保健所相談から取得までの流れ
キッチンカー開業に必要な営業許可の取り方を、保健所への事前相談から車両の設備基準、申請書類、検査、取得後の注意点まで順を追って解説。出店エリアごとの許可や食品衛生責任者の準備もまとめます。

キッチンカーは、車両代や改装費を払い終えても、許可が取れるまでは営業を始められません。「保健所に何から聞けばいいのかわからない」「車を先に買って、基準に合わなかったらどうしよう」。そんな不安を抱えたまま準備を進めている方も多いのではないでしょうか。
ここでは、保健所への事前相談から許可証が届くまでの流れを順番に追っていきます。設備基準や申請書類、営業する地域が複数の自治体にまたがる場合の注意点、許可を取った後の手続きまでまとめました。開業準備のチェックリスト代わりに使ってみてください。
キッチンカー開業に営業許可が必要な理由と許可の種類

車であっても、食品を調理して販売するなら固定の店舗と同じく保健所の営業許可が要ります。厚生労働省の資料にも「自動車において調理した食品を提供する事業者は、固定施設と同様、原則、管轄区域ごとに営業許可が必要」とあります。
2021年の法改正で制度が見直された
営業許可の制度は、2021年6月の食品衛生法改正で大きく変わりました。公衆衛生に与える影響が著しい営業として、漬物製造業、水産製品製造業、液卵製造業等を含む32の許可業種が定められています。同時に、原則、全ての食品等事業者にHACCPに沿った衛生管理が義務付けられました。
どの許可が必要かはメニューで決まる
どの許可を取るかは、「何を、どこまで車内で作るか」次第です。よくある例を表にしました。
| 営業の内容 (例) | 必要な手続きの考え方 |
|---|---|
| 車内で調理して提供する (焼く・揚げる・盛り付けるなど) | 飲食店営業の許可が基本 |
| 車内でお菓子を製造して販売する | 業種の区分を保健所に確認 |
| 包装済みの商品を売るだけ | 許可でなく「届出」で済む場合もある |
改正後は、営業許可を要する業種以外でも、食品営業を行う場合は一部の業種を除いて保健所への届出が必要になりました。自分のメニューがどこに当てはまるのか。ここは自己判断せず、事前相談で必ず確かめてください。
「車検に通る」と「営業許可が取れる」は別の話
キッチンカーには、車両としての手続きと営業許可の2つが必要です。ひとつは国土交通省の構造要件に適合させる8ナンバー(特種用途自動車・加工車)登録、もうひとつが食品衛生法に基づく保健所の営業許可です。
「車検対応」と「営業許可対応」はまったくの別物。車検に通る車だからといって、営業許可の基準も満たしているとは限りません。車を探す段階から、両方を頭に入れておくと失敗が減ります。
まずは保健所へ事前相談。何を聞き、何を持っていくか

いちばん大事なのは、車を買ったり改装したりする前に保健所へ相談することです。世田谷区も「車を購入・改造する前に図面等を保健所にご相談ください。」と案内しています。
相談先は「主に営業する地域」の保健所
相談に行くのは、主に営業する予定の地域を管轄している保健所です。キッチンカーの施設基準は都道府県・自治体ごとに細部が違うので、車両の図面(給排水タンク・シンク・調理設備の配置)を持っていき、その場で確認してもらいます。予約なしで受け付けてくれる保健所もありますが、前もって電話を入れておくほうが確実です。
持っていくもの
- 車両の図面:外観と内部のレイアウト (シンク・手洗い・タンク・冷蔵庫・加熱機器の位置)
- タンクなど設備の仕様書:容量やメーカーがわかるもの
- メニュー案:品目ごとの調理の手順 (温める・揚げる・切るなど)
- 営業予定地のメモ:どの市区町村で営業したいか
- 仕込み場所の情報:車の外で下ごしらえする場合
相談では、調理・販売する品目もあわせて確認されます。メニューによって必要な設備が変わるため、「からあげ丼とポテト」のように、作りたい商品はできるだけ具体的に伝えてください。
聞いておきたいこと
まず確かめたいのは、自分のメニューに必要な許可の種類と、タンクの容量です。続けて、手洗い設備やシンク、冷蔵設備などの細かい基準も聞いておきます。
手続きまわりでは、申請書類の一覧と提出の時期、手数料の金額と支払い方法、車両検査の場所や日程の決め方を確認しておくと後で慌てません。それから、取った許可でどの地域まで営業できるのか。出店先を広げたい人ほど、ここは最初に聞いておきたいところです。
車両の設備基準:シンク・給排水タンク・冷蔵設備のチェックポイント

給排水タンクの容量は「メニュー」で決まる
以前は、車の種類で基準が分かれていました。浜松市によると、給排水タンクの容量は普通自動車は200リットル、軽自動車は40リットルと車種によって決めていたそうです。改正後は、取り扱う食品の調理工程や品目数に応じて必要なタンク容量が決まります。
| タンク容量の目安 | 調理・メニューの目安 | 食器 |
|---|---|---|
| 約40L | 温める・揚げる・盛り付けるなどの簡単な調理、1品目のみ | 使い捨て |
| 約80L | 2工程くらいまでの簡単な調理、複数品目 | 使い捨て |
| 約200L | 複数の工程がある調理が可能 | 洗って再利用する食器も使用可 |
※自治体の案内などをもとにした目安です。細かい扱いは管轄の保健所に確認してください。
気をつけたいのは、調理の工程数だけでは決まらない点です。兵庫県は「リスクリストに該当する場合の貯水設備の容量は、調理の工程の数にかかわらず、各リスクリストにおいて指定する容量が必要になります。」としています。生の魚介類や、加熱しない野菜・果物を出すつもりなら、確認が欠かせません。
いずれメニューを増やしたいと考えているなら、最初から少し余裕のある容量を選んでおくと、後から改装せずに済みます。
手洗い設備とシンク
手洗い設備は、手で蛇口に触らずに使える形を求められることが多いようです。浜松市では、流水式手洗い設備の水栓は原則として「手指の再汚染を防止できる構造(手で触れなくても水が止まるレバー式、足踏み式、センサー式等)」が必要とされています。
シンクの数や大きさ、手洗い用と調理用を分けるかどうかは、自治体によって違うことがあります。蛇口やシンクを注文する前に、製品の写真や寸法を見せて確認しておけば安心です。
冷蔵設備・その他のチェックポイント
冷やして保存する食材を扱うなら、冷蔵設備は量に見合った大きさか、温度を確かめられるかを見ておきます。電動ポンプや冷蔵庫を動かす電源をどう確保するかも、意外と見落としがちなところです。
内装では、床・壁・天井が掃除しやすい素材かどうか。調理する場所が運転席ときちんと区切られているか。ごみ箱にふたが付いているか。このあたりも基準に関わってきます。
こうした細かい基準も、自治体ごとの条例や運用で違います。図面の段階で保健所にひととおり見てもらうのが、作り直しを防ぐいちばんの近道です。
食品衛生責任者の取得と申請書類の準備

食品衛生責任者は早めに取っておく
営業許可を受ける施設には「食品衛生責任者」を置かなければなりません。調理師や栄養士などの資格がない場合は、各都道府県の食品衛生協会などが開く養成講習会を受けて取得するのが一般的です。
東京都の場合、東京都食品衛生協会の会場講習会なら「食品衛生責任者」の資格を1日の講習で取得できます。受講料は12,000円 [内訳:受講料10,000円(非課税)、教材費等2,000円(消費税10%:182円含む)]です (記事執筆時点の2026年11月に確認)。受講料や講習の方式は地域によって違うので、お住まいの地域の食品衛生協会に問い合わせてください。
申請書類には資格の証明が必要です。事前相談と同じ時期に講習も申し込んでおけば、書類をそろえる段階で足止めされずに済みます。
申請書類の一例
東京都の案内では、自動車の新規申請に必要な書類として次のものが挙げられています。
- 1: 営業許可申請書(PDF:305KB Excel:42KB)
- 2: 施設の構造及び設備を示す図面(2通)
- 3: 営業の大要(2通)(PDF:118KB Word:24KB)
- 4: 食品衛生責任者の資格を証明するもの(食品衛生責任者手帳等)
準備の目安を表にまとめると、こうなります。
| 書類 | 準備のポイント |
|---|---|
| 営業許可申請書 | 保健所の窓口やサイトで入手 |
| 車両の構造・設備の図面 | 事前相談で確認した内容を反映させる |
| 営業の大要 | 仕込み場所・出店予定地・取扱品目などを書く |
| 食品衛生責任者の資格証明 | 講習会の修了証など |
| 申請手数料 | 金額は自治体によって違う |
ほかにも、板橋区は「仕込み場所の営業許可書の写し、登記事項証明書、自動車検査証の確認を行う場合がございます。」としています。東京都も「申請又は施設検査時に衛生管理計画を確認させていただきますのでご用意ください。」と案内しています。求められる書類は自治体ごとに違うため、事前相談の場で一覧をもらっておくのが確実です。
申請から車両検査、許可証交付までの流れと期間
全体の流れ
| ステップ | やること | 時期の目安 |
|---|---|---|
| ① 事前相談 | 図面・メニューを持って保健所へ | 車を買う・改装する前 |
| ② 車両の製作・改装 | 相談内容に合わせて作る | 数週間〜数か月 (業者による) |
| ③ 申請書類の提出 | 書類と手数料を出す | 営業開始の10〜14日前が一例 |
| ④ 車両検査 | 保健所に車を持ち込んで確認を受ける | 日程は保健所と調整 |
| ⑤ 許可証の交付 | 許可が出たら営業開始 | 検査に合格した後 |
申請の時期について、世田谷区は都内で営業を始める10~14日前を目安に書類を出すよう案内しています。手数料は自治体ごとに違い、目安は1万円台半ば〜後半くらい。「申請手数料:16,000〜19,000円(都道府県により異なる)」と紹介している情報もあります。
車両検査は「持ち込み」が基本
固定の店舗と違い、キッチンカーは自分で車を保健所へ持っていって検査を受けます。通常の飲食店なら保健所の職員がお店に来てくれますが、キッチンカーの場合は保健所へ直接持ち込む形です。
板橋区の案内では、当日は「給水タンクに水を入れてきてください。(電源式の場合は通電をお願いします)」とされています。営業者本人の立ち会いも必要です。基準に届いていない点が見つかれば、直したうえでもう一度検査を受けることになります。
また板橋区は「事前のご相談なく車をお持ちいただいても、検査をすることができません。」とも書いています。いきなり車で乗りつけても検査はしてもらえないので、相談と日程の調整を先に済ませておいてください。
出店エリアが複数の自治体にまたがるときの注意点
イベントに出たり、日替わりで場所を変えたりしたい場合、一つの許可でどこまで営業できるかは避けて通れない問題です。冒頭でも触れたとおり、営業許可は原則として保健所の管轄区域ごとに必要になります。
保健所ごとに相談・許可が必要になることがある
都道府県の保健所とは別に、市や区が自前の保健所を持っている地域もあります。そうした地域では、同じ県内でも市が変われば別の許可が要ることがあります。複数の保健所の管轄で出店するなら、それぞれの保健所に個別に事前相談が必要です。同じ図面でも、保健所によっては追加の改修を求められる場合もあります。
逆に、自治体同士で調整している地域もあります。厚生労働省の資料には、都道府県と保健所設置市で差異があったものの、両者で協議して調整した例が載っています。東京・埼玉・神奈川・千葉には都県内全域で有効なエリアルールがあると紹介している情報もあります。ただ、運用は変わることもあるので、最新の情報は必ず管轄の保健所で確かめてください。
複数の地域で営業するときの進め方
- 営業したい場所を、優先順位をつけて書き出す
- それぞれの場所を管轄している保健所を調べる
- いちばん基準が厳しい地域に合わせて車を作ると、後から改装する手間が減る
- 許可ごとに有効期限と許可番号を一覧で管理する
許可取得後に忘れがちな更新・変更届と日々の衛生管理
有効期間と更新
営業許可には有効期間があります。費用1万4千〜1万8千円・有効期限5年というのが一般的な目安ですが、期間は自治体の決まりによって違うこともあります。手元の許可証に書かれた日付を一度確かめておいてください。足立区のように「許可満了日の1ヶ月ほど前に保健所からお知らせを発送します。」という自治体もありますが、自分でもカレンダーに入れておけば取りこぼしません。
変更届が必要なケース
東京都では「営業許可申請書に記載した事項や営業設備等に変更が生じたときは、変更のあった日から10日以内にその旨の届出をしてください。」とされています。届出が必要になる主な例は次のとおりです。
- 仕込み場所・出店予定地・取扱品目が変わった
- 車を買い替えてナンバーが変わった
- 食品衛生責任者が変わった
- 住所や屋号 (法人の名前) が変わった
ただし、変更届だけでは済まないケースもあります。東京都の案内では、営業者が変わった場合や、改装などで営業設備が変わった場合は、廃業届を出したうえで別途、営業許可の新規申請が必要です。車の設備に手を入れる前や、車を乗り換える前にも、保健所へひと声かけておくと安心です。
日々の衛生管理
許可を取った後も、HACCPに沿った衛生管理が求められます。小さなお店なら、毎日の基本を記録とセットで続けていくのが現実的です。
開店前と閉店後には、手洗い設備・シンク・タンクを掃除します。冷蔵庫の温度は確認して記録に残す。給水タンクの水は毎回入れ替え、排水は決まった方法で処理する。使い捨て容器は清潔な場所にしまっておく。どれも地味な作業ですが、片付けのついでに習慣にしてしまえば負担はそれほど大きくありません。
営業が軌道に乗ってきたら、お客様の待ち時間を減らす工夫も考えてみてください。キッチンカーは昼どきなど混む時間帯に注文が集中しやすく、事前予約を受け付けておけば作業の段取りが立てやすくなります。予約受付を仕組み化したいなら、小規模店舗向けのテイクアウト・予約注文受付システム OutFood を無料で始められます。月20件までは無料のFreeプランで、受取日時を選んでもらう事前決済つきの注文を受け付けられます。
衛生管理や許可の細かい決まりは自治体によって違います。迷ったときは保健所に確認し、税金や開業の手続きについては税理士などの専門家に相談してください。
まとめ
キッチンカーの営業許可を取るまでの流れを、最後に振り返っておきます。
- 営業許可は必須。調理して販売するなら、固定店舗と同じく保健所の許可が要る。車検 (8ナンバー) とは別の手続き
- 事前相談が最優先。車を買う・改装する前に、図面とメニュー案を持って保健所へ
- 設備基準はメニューで決まる。給排水タンクは約40L・80L・200Lが目安で、手洗い設備や冷蔵設備も確認が必要
- 書類と食品衛生責任者は並行して準備する。必要書類は自治体で違うので、相談のときに一覧をもらう
- 検査は車を持ち込む。タンクに水を入れて立ち会い、不合格なら直して再検査
- 複数の地域で営業するなら、保健所ごとに相談・許可が必要になることがある
- 許可を取った後も、有効期限の管理、10日以内の変更届、毎日の衛生管理を続ける
キッチンカーの営業許可がわかりにくい一番の理由は、自治体ごとに細かいルールが違うことです。だからこそ、早めに、具体的に保健所へ相談する。この一点を押さえておけば、遠回りせずに開業までたどり着けます。



