記事一覧に戻る

発注は勘に頼ってない?個人飲食店の在庫管理と棚卸しのやり方

食材の欠品や廃棄が続くなら、発注のルールを見直す時期です。個人飲食店でも続けられる在庫管理と月1回の棚卸しの手順、発注点の決め方、ロスを減らす保管の工夫を紹介します。

発注は勘に頼ってない?個人飲食店の在庫管理と棚卸しのやり方

「気づいたら玉ねぎが切れていて、営業中に慌てて買いに走った」「週末用に多めに仕入れた鶏肉が余って、結局捨てた」。個人店をやっていれば、どちらも一度は覚えがあるのではないでしょうか。

仕込みも接客も会計も一人か少人数で回していると、在庫のことはどうしても後回しになります。発注も「たぶんこのくらい」で済ませがち。ただ、欠品と廃棄がどちらも続いているなら、勘をやめてルールで発注する仕組みに切り替える時期です。

ここでは、個人店でも無理なく続けられる在庫管理のやり方をまとめました。月1回の棚卸し、発注点の決め方、ロスを減らす保管の工夫の順に見ていきます。

欠品と廃棄が同時に起きる店の在庫管理の落とし穴

厨房での食材確認

「足りない」と「余る」は、正反対の悩みに見えます。ところが実際には、同じ店で同時に起きていることが珍しくありません。原因も、たいてい同じところにあります。

「なんとなく多め」が廃棄を生む

一度欠品で困ると、「次は多めに頼んでおこう」と思うのが人情です。乾物のように日持ちするものなら、それでも問題はありません。困るのは、肉や魚、葉物のような傷みやすい食材を多めに頼んだとき。使い切れなかった分は、そのまま廃棄に回ります。

見えていない在庫が欠品を生む

冷蔵庫の奥に押し込んだ食材や、別の棚に置いたストックは、いつの間にか「ないもの」扱いになっています。あると思っていたら切れていた。ないと思って注文したら、奥から出てきた。どこに何がどれだけあるかが見えていないと、発注の判断はどうしてもぶれます。

原因は「量」ではなく「ルールがないこと」

よくあるのは、こんな状態です。発注の量が、その日の気分や前回の失敗に引っぱられる。在庫の確認は、冷蔵庫を開けたときの印象だけ。担当者によって発注の基準が違う。食材の置き場所が決まっていないので、古いものが奥に残り続ける。

どれも、仕入れの量が多いか少ないかの話ではありません。発注を判断するルールがない、という一点に行き着きます。ここからは、そのルールを一つずつ作っていきます。

まず決める:管理する食材の優先順位の付け方

食材の優先順位リスト

すべての食材を毎日数えるのは、個人店では現実的ではありません。長く続けるには、管理する食材に優先順位を付けて、手間をかける品目を絞ることです。

「金額」「日持ち」「使用頻度」で3つに分ける

食材を、次の3つのグループに分けてみてください。

グループ当てはまる食材の例チェックの頻度 (目安)
A:重点管理単価が高い・傷みやすい食材 (肉、魚、乳製品、葉物野菜など)毎日〜発注のたび
B:定番管理毎日使う基本の食材 (玉ねぎ、卵、米、主力メニューの材料など)週1回
C:まとめ管理日持ちする食材や消耗品 (調味料、乾物、油、包材など)月1回の棚卸しのみ

調味料や包材まで毎日数える必要はありません。手間をかけるのはAだけ、と割り切ってしまえば気が楽になります。

最初は「A」を10品目ほどに絞る

最初から細かく管理しようとすると、たいてい途中で息切れします。まずはAグループを10品目前後に絞り、その在庫だけは毎日把握する。そこから始めるのが現実的です。

どれを選ぶか迷ったら、捨てたときに「もったいない」と強く感じるもの、切れると看板メニューが出せなくなるもの、仕入れ値が上がりやすく原価に響くものを思い浮かべてみてください。要は、捨てたときの損と欠品したときの損が大きい食材から選べばいいわけです。

月1回で回る棚卸しの手順と記録シートの作り方

棚卸し作業の様子

棚卸しは、店にある在庫を実際に数えて記録する作業です。面倒に思えるかもしれません。それでも月1回続けていれば、発注の判断材料と原価の実態が見えてきます。

棚卸しの日と時間を固定する

最初に「いつやるか」を決めてしまいます。月末の最終営業日の閉店後でも、月初の仕込み前でもかまいません。大事なのは、毎月同じタイミングにすることです。

仕入れが届く直前に数えるようにすると、在庫が少ないぶん作業が楽になります。所要時間は30分〜1時間を目安に、続けられる範囲で見積もっておいてください。

棚卸しの手順

  1. 記録シートを用意する (前月のシートをコピーして使う)
  2. 保管場所ごとに順番に数える (冷蔵庫 → 冷凍庫 → 乾物棚 → 倉庫など)
  3. 単位をそろえて記入する (kg、個、袋、本など品目ごとに固定する)
  4. 開封済みのものは目分量のルールで記録する (「半分なら0.5袋」など)
  5. 単価を掛けて在庫金額を出す
  6. 前月と比べて、大きく増減した品目にメモを残す

コツは、シートの品目の並びを保管場所の並びに合わせておくこと。冷蔵庫の上の段から順に品目を書いておけば、閉店後の疲れた頭でも探す手間が減り、数え漏れも防げます。

記録シートの作り方

紙でも表計算ソフトでもかまいません。項目は次のくらいあれば十分です。

保管場所品目単位単価今月の数量在庫金額前月の数量メモ
冷蔵庫・上段鶏もも肉kg週末に多め
冷蔵庫・下段玉ねぎ個
乾物棚米kg

※表は記入例の枠だけを示しています。単価や数量はお店の実際の数字を入れてください。

棚卸しの数字から原価をつかむ

棚卸しの数字がそろうと、その月に実際に使った食材の金額が計算できます。

その月に使った食材の金額 = 月初の在庫金額 + その月の仕入れ金額 − 月末の在庫金額

これを売上で割れば、その月の実際の原価率が出ます。メニューで想定していた原価率と大きくずれていたら、廃棄や盛り付け量のばらつき、記録漏れなどがどこかで起きているサインです。

なお、確定申告で年末の在庫 (棚卸資産) をどう扱うかといった税務上の処理は、お店ごとの事情で変わります。詳しくは税理士などの専門家に確認してください。

発注点と発注量の決め方:使用量から逆算する

発注量を計算するシェフ

「発注点」とは、在庫がこの量まで減ったら発注する、という基準の量のこと。品目ごとに決めておけば、勘に頼らずに発注できるようになります。

ステップ1:1日の使用量を出す

棚卸しの記録や仕入れ伝票をもとに、1日に平均どれくらい使っているかを計算します。

1日の使用量 = (前回の在庫 + 期間中の仕入れ − 今回の在庫) ÷ 営業日数

正確でなくて大丈夫。まずは大まかな数字がつかめれば十分です。

ステップ2:発注点を計算する

発注点 = 1日の使用量 × 発注から納品までの日数 + 安全在庫

「安全在庫」は、思ったより売れた日や納品が遅れたときに備える余裕分です。最初は1日分くらいを目安にして、様子を見ながら調整していけばいいでしょう。

計算の一例を挙げます。

  • 鶏もも肉の1日の使用量:2kg
  • 発注から納品まで:2日
  • 安全在庫:1日分 (2kg)
  • 発注点 = 2kg × 2日 + 2kg = 6kg

この場合は、在庫が6kgを切ったら発注する、というルールになります。

ステップ3:発注量を決める

仕入れ先の配送曜日が決まっているなら、次の納品まで足りる量を逆算して頼みます。

発注量 = 次の次の納品までに使う量 + 安全在庫 − 今の在庫 − 届く予定の量

傷みやすい食材には「上限」も決める

Aグループの食材は、発注点と一緒に最大在庫、つまり「これ以上は持たない量」も決めておきます。目安は「おいしく使い切れる日数 × 1日の使用量」。上限があると、「念のため多めに頼んでおこうか」という気持ちにブレーキがかかります。

品目1日の使用量納品までの日数安全在庫発注点上限
鶏もも肉 (一例)2kg2日2kg6kg使い切れる日数から決める

曜日・天気・行事で補正する

平均の使用量は、あくまで出発点にすぎません。週末や連休前は多めに、雨の日が続く予報なら控えめに。近くでイベントがある日は、前回の実績をメモで確かめます。季節限定メニューを始める前後や終える前後も、使用量が大きく動くタイミングです。

補正した理由と、その結果どうだったかを発注メモに残しておく。それだけで、回を重ねるごとに判断が正確になっていきます。

先入れ先出しと保管ルールで食材ロスを減らす

発注が適正でも、保管がばらばらでは廃棄は減りません。発注のルールと保管のルールは、セットで整えてこそ効いてきます。

先入れ先出しを徹底する

先入れ先出しとは、先に仕入れたものから先に使うことです。新しく届いた食材は奥や下に、古いものは手前や上に置きます。同じ食材がいくつもあるときは、取り出す位置も決めておく。納品のたびに並べ替えるのを習慣にしてしまえば、どれから使うか迷うことはなくなります。

ラベルで「いつのものか」を見える化する

仕込んだものや開封したものには、開封日・仕込み日・使用期限の目安を書いたラベルを貼ります。マスキングテープと油性ペンで十分です。ランチ前の仕込み中に「これ、いつのだっけ?」と手が止まることも、日付が見えるだけでぐっと減ります。もちろん廃棄も減ります。

定位置管理で「見えない在庫」をなくす

冷蔵庫や棚のどこに何を置くかを決めて、簡単な配置図を扉に貼っておきます。置き場所が決まっていれば、在庫の確認は数秒で終わります。二重発注も防げます。

余りそうな食材の「出口」を用意しておく

それでも余る日はあります。だからこそ、使い切るための出口を前もって決めておくと安心です。日替わりメニューやおすすめメニューに回す、スタッフのまかないに使う、下処理をしてから冷凍して保存方法を変える、といったやり方が考えられます。

ただし、冷凍や作り置きをするときの温度管理や保存期間の設定は、衛生管理のうえで大切なところです。お店の衛生管理計画に沿って判断し、詳しくは管轄の保健所に確認してください。

予約・事前注文の数字を発注に活かすコツ

在庫管理で一番難しいのは、「明日いくつ売れるか」が読めないことです。裏を返せば、前もって確定している注文が多いほど、発注は楽になります。テイクアウトの予約や事前注文は、在庫管理の面でも頼りになる存在です。

確定している数の分は安全在庫を減らせる

予約で入っている数は、ほぼ確実に出ていく量です。そこは「読み」が要らないので、余分に持っておく必要がありません。予約が多い日ほど、余裕分は小さくできると考えてください。

必要な量 = 予約で確定している量 + 当日来店分の予測 + 安全在庫

予約の締め切りを発注の締め切りに合わせる

予約の締め切りが仕入れ先の発注締め切りより後ろにあると、確定した数字を発注に反映できません。たとえば仕入れ先の締め切りが前日の15時なら、予約の受付は前日のお昼ごろに締める、という具合です。予約の締め切りを発注の締め切りより前に置く。ここが一番のコツです。

「作れる数」に合わせて受付数を決める

数量限定の商品は、受付数の上限を決めておけば、仕入れた分以上の注文を受けてしまう心配がありません。受取日時ごとに枠を分けておくと、仕込みの段取りも組みやすくなります。

電話や DM で予約を受けていると、数字を集計するだけでも一苦労です。予約受付を仕組み化したい場合は、テイクアウトの予約注文を受け付けられる OutFood という選択肢もあります。受取日時の枠を設定でき、商品ごとに販売可否や在庫を管理できます。注文は管理画面の一覧で確認できます。Free プランなら月20件まで無料なので、まずは少ない件数から試せます。

一人でも続けられる在庫管理の週間ルーティン

在庫管理は、一度やったら終わりというものではありません。短い作業を決まったタイミングで繰り返して、はじめて効き目が出てきます。一人でも回せるルーティンの例を挙げておきます。

タイミングやること時間の目安
毎日 (閉店後)Aグループの残量チェック、仕込み品のラベル確認5分程度
発注日予約数を確認 → 発注点を下回った品目を発注 → 発注メモに記録10〜15分程度
週1回冷蔵庫・冷凍庫の整理と先入れ先出しの確認、Bグループのチェック15〜20分程度
月1回棚卸し、原価率の確認、発注点と上限の見直し30分〜1時間程度

※時間はあくまで目安です。品目数やお店の規模に合わせて調整してください。

続けるためのコツ

まず、完璧を目指さないこと。多少の数え間違いがあっても、毎月続けることのほうがずっと意味があります。道具もシンプルで十分で、紙のシートでも表計算ソフトでも、自分が続けやすいほうを選べば大丈夫です。

発注メモは一言で足ります。「雨で客足が鈍った」「イベントで売れた」と書いておくだけで、次の判断材料になります。それから、メニューを変えたときや季節の変わり目には、発注点の見直しも忘れずに。

まとめ

欠品と廃棄が同時に起きる原因は、発注量ではなくルールがないことにあります。最後に、ここまでの流れを振り返っておきます。

まずは食材を「金額・日持ち・使用頻度」で3つに分け、重点管理する食材を10品目前後に絞ります。棚卸しは月1回、日時を固定して保管場所の順に数える。月初の在庫+仕入れ−月末の在庫で、実際の原価がつかめます。

発注は「1日の使用量 × 納品までの日数 + 安全在庫」で出した発注点を基準にし、傷みやすい食材には上限も決めておきます。保管は、先入れ先出し、日付ラベル、定位置管理をセットで続けること。予約や事前注文で確定した数が多いほど発注は正確になるので、予約の締め切りは発注の締め切りより前に置きます。あとは毎日5分、週1回、月1回の作業を決めて、無理のないペースで回していけば大丈夫です。

衛生管理や税務の扱いは、お店ごとに事情が違います。迷ったときは、保健所や税理士などの専門家に確認してください。手始めに、今週は重点管理する10品目を決めるところから始めてみてください。

#在庫管理#棚卸し#食材発注#食品ロス#店舗運営

SHARE

関連記事