セットにすれば客単価は上がる?テイクアウトのセットメニューの組み方
テイクアウトのセットメニューで客単価を上げるには、組み合わせ・値引き幅・見せ方の設計が欠かせません。原価率を崩さない値付けや、業態別の組み方の例、注文画面での並べ方まで個人店向けにまとめます。

テイクアウトのメニューを見直していると、「セットを作ったら客単価は上がるのかな」と考えることがあると思います。そのいっぽうで、「値引きしたぶん利益が減るんじゃないか」「仕込みが増えて回らなくなるんじゃないか」という不安もありますよね。
セットメニューは、並べておけば勝手に売れるものではありません。ただ、組み合わせと値引き幅、見せ方。この3つを先に決めておくだけで、客単価も利益も上げやすくなります。個人店がすぐ使える組み方を、計算の例を交えながら見ていきます。
単品だけの店とセットがある店、客単価はどこで差がつくのか

客単価は「1回の注文の合計金額」のこと。お店ごとにざっくり出すなら、売上を注文件数で割れば十分です。単品だけの店とセットがある店では、主に次の3つの場面で差が出ます。
「ついで買い」を自分から言い出さなくて済む
単品メニューしかないと、お客様は「お弁当だけ」「パン1個だけ」と、目当ての商品だけ買って帰りがちです。本当はサラダや飲み物も欲しかったのに、選ぶのが面倒でやめてしまう。そんなこともよくあります。
セットがあれば、「これとこれを一緒にどうぞ」という提案をお店側から先に出せます。レジで「ご一緒にいかがですか」と声をかけなくても、メニューを見た時点で追加購入のきっかけができる。ここが単品だけの店との大きな違いです。
迷う時間が減り、注文しやすくなる
テイクアウトのお客様は、昼休みや仕事帰りなど、時間に追われていることが多いもの。単品を一つずつ組み合わせるより、「Aセット」とひと言で済むほうがずっとラクです。
選びやすいというだけで、買ってもらう理由になります。はじめて来たお客様にとっては、「この店のおすすめはこれなんだ」とわかる案内役にもなってくれます。
「お得感」が少し高い買い物を後押しする
「単品で買うより100円お得」と書いてあれば、合計金額が上がっても納得して買ってもらいやすくなります。ただし、値引いたぶんは追加で売れた商品の利益で取り返さなければ意味がありません。この計算は後の章で詳しく扱います。
売れるセットの基本形:主役・脇役・ドリンクの組み合わせ方

何をどう組めばいいか迷ったら、まずは「主役 + 脇役 + ドリンク」の3点から考えてみてください。
| 役割 | どんな商品か | 例 |
|---|---|---|
| 主役 | お客様の来店目的。お店の看板商品 | 弁当、サンドイッチ、ケーキ、丼 |
| 脇役 | 主役と一緒に食べたくなる小さな一品 | サラダ、スープ、唐揚げ2個、焼き菓子 |
| ドリンク | 原価が低めで粗利をとりやすい | お茶、コーヒー、ジュース |
主役は「すでに売れている商品」から選ぶ
セットのために新しい商品を考える必要はありません。いちばん売れている単品をそのまま主役にすれば大丈夫です。もともと注文が多い商品なので、そこに脇役とドリンクを足してもらう流れが自然にできあがります。
脇役は「仕込み済み」「原価が低め」「主役と相性がいい」
脇役選びでは、見るところが3つあります。
まず、すでに仕込んでいるものを使い回せるか。ランチ前の仕込みに新しい作業が一つ増えるだけでも、毎日となると負担は大きくなります。次に、原価率が低めかどうか。原価の軽い一品を入れると、セット全体の原価率を下げてくれます。最後に、主役と味や食感がかぶらないか。揚げ物の弁当なら、さっぱりしたサラダを合わせるといった具合です。
ドリンクは「利益の調整役」
ドリンクは原価率が低くなりやすい商品です。セットに入れると、全体の原価率を抑えたまま合計金額を上げられます。テイクアウトなら、ペットボトルや紙パックの飲み物をそのまま袋に入れて渡すだけ。手間はほとんど増えません。
「固定セット」と「選べるセット」
セットには、中身が決まっている固定セットと、「サラダ or スープ」「ドリンク3種から1つ」のように選択肢がある選べるセットがあります。固定セットは仕込みも会計もシンプル。選べるセットはお客様の満足度が上がるぶん、在庫の管理が少し複雑になります。
最初は固定セットで始めるのが無難です。選択肢を付けるとしても2〜3択までにしておけば、忙しい時間帯でも現場が混乱しにくくなります。
いくら引くのが正解?原価率を崩さないセット価格の決め方

セットでいちばんつまずきやすいのが値付けです。「なんとなく100円引き」で決めてしまう前に、次の順番で考えてみてください。
ステップ1: 容器代まで含めて「セットの原価」を出す
テイクアウトでは、食材費のほかに容器やカトラリー、袋の費用もかかります。セットにすると容器が一つ増えることもあるので、ここは必ず原価に入れて計算してください。
ステップ2: 「粗利額」が増えるかで判断する
次のような数字の例で考えてみます(あくまで説明用の一例です)。
| 商品 | 単品価格 | 原価(容器込み) |
|---|---|---|
| 唐揚げ弁当 | 600円 | 210円 |
| ミニサラダ | 200円 | 60円 |
| お茶 | 150円 | 50円 |
| 合計 | 950円 | 320円 |
これを880円のセット(70円引き)にすると、こうなります。
- セットの原価率: 320円 ÷ 880円 ≒ 約36%
- セット1つの粗利: 880円 − 320円 = 560円
弁当だけが売れた場合の粗利は、600円 − 210円 = 390円。つまり値引きをしても、お客様がセットを選んでくれれば1人あたりの粗利は170円増えるわけです。原価率だけ見ると少し上がっていますが、手元に残るお金、つまり粗利額はしっかり増えています。見るべきはこちらです。
ステップ3: 目標原価率から逆算する
もう一つの決め方が、目標の原価率から逆算するやり方です。
セット価格 = セットの原価 ÷ 目標原価率
上の例で目標原価率を35%とすると、320円 ÷ 0.35 ≒ 914円。キリよく900円にするか、少し攻めて880円にするか。そこはお店の方針で決めてかまいません。
値引き幅の考え方
値引きの上限は、追加で売れる商品の粗利までと考えてください。上の例なら、サラダとお茶の粗利は合計240円。これ以上引くと、弁当を単品で売ったときより利益が減ってしまいます。
実際の値引き幅は、単品合計の5〜10%前後を一つの目安にして、お得感が伝わっているかを見ながら調整していきます。
値引きではなく、「ドリンク付きで+150円」のような追加料金型にする手もあります。値引き感は弱くなるものの、計算がシンプルで、単価も上げやすいやり方です。
税金・表示についての注意
テイクアウトの飲食料品には軽減税率が適用されるのが一般的です。ただ、酒類や食器・グッズなど食品以外のものをセットに入れる場合は、税率の扱いが変わることがあります。価格の表示方法も含めて、詳しくは税理士や税務署に確認してください。
業態別のセット例:弁当屋・パン屋・ケーキ屋・キッチンカー

ここからは業態ごとの組み方の例です。価格は書かず、構成の考え方だけに絞っています。
| 業態 | 基本のセット例 | 組み方のポイント |
|---|---|---|
| 弁当屋 | 弁当 + 汁物 + お茶 | 汁物は仕込みをまとめやすく、原価も抑えやすい |
| パン屋 | 惣菜パン + 菓子パン + ドリンク | 「朝食セット」「ランチセット」など時間帯で名前を付ける |
| ケーキ屋 | ケーキ2〜4個の詰め合わせ + 焼き菓子 | 「手土産」「家族用」など、使い道で分ける |
| キッチンカー | メイン + ドリンク | 1品足すだけの「+ドリンク」で回転を落とさない |
弁当屋: 「汁物付き」で満足度を上げる
弁当屋なら、汁物やミニサラダを脇役にすると組みやすいでしょう。汁物は朝のうちに大鍋でまとめて作っておけるので、注文ごとの手間はほとんど増えません。「ご飯大盛り + 唐揚げ1個追加」のようなボリュームアップ型のセットも、男性客や学生によく合います。
パン屋: 時間帯とシーンで組む
パン屋の強みは、今ある単品を組み合わせるだけでセットが作れること。食事パンとドリンクで朝食セット、サンドイッチとスープでランチセット、焼き菓子2種の詰め合わせでおやつセット、といった具合に、時間帯ごとに名前を付けると選ばれやすくなります。
予約注文を受けているなら、「翌朝受取の朝食セット」のように受取時間とセットで提案するのもおすすめです。
ケーキ屋: 「人数」と「用途」で組む
ケーキ屋のお客様は、「家族4人分」「手土産に」など目的がはっきりしていることが多いですよね。「おまかせ4個セット」のように中身をお店側で決めておけば、ショーケースの在庫も調整しやすくなります。持ち帰りの時間や保冷の扱いはお店の衛生管理に関わる部分なので、不安があれば保健所に確認してください。
キッチンカー: とにかくシンプルに
限られたスペースと人数で回すキッチンカーでは、セットは1〜2種類に絞るのが現実的です。「メイン + ドリンクで○円」だけでも会計が速くなり、行列の解消にもつながります。
セットを増やしすぎない:仕込みとオペレーションの負担を抑えるコツ
セットが売れ始めると、つい種類を増やしたくなるものです。ですが増やしすぎると、仕込みも在庫も会計も、全部が複雑になってしまいます。
セットの数は「3つ前後」から
最初は2〜3種類で十分です。選択肢が多すぎるとお客様のほうも迷ってしまい、「選びやすい」というセット本来の強みが薄れてしまいます。
脇役を「共通パーツ」にする
どのセットにも同じサラダやスープを使えば、仕込みは1種類で済みます。脇役は全セット共通にして、主役だけを入れ替えてバリエーションを出す。この形にしておくと、朝の仕込みが格段にラクになります。ドリンクも常温で保存できるものを選んでおけば、冷蔵庫のスペースを取られず、在庫の管理も手間がかかりません。
売り切れ時のルールを先に決めておく
「サラダが切れたら、セットはどうする?」。これを決めていないと、昼のピークの最中に慌てることになります。脇役が切れたらセットは販売停止にするのか、代わりに別の商品を入れるのか。どちらにするかを前もって決めて、スタッフとも共有しておいてください。
繁忙時間だけセットを止める選択肢も
ランチのピークでどうしても手が回らないなら、その時間帯だけセットを出さないのも一つの手です。セットはあくまで売上を伸ばすための道具。オペレーションを崩してまで続ける必要はありません。
注文画面やメニュー表での見せ方と、売れ行きの見直し方
中身が同じセットでも、見せ方ひとつで売れ行きは変わります。
見せ方の基本
まず、セットはメニューのいちばん上に置きます。最初に目に入る場所にあるだけで、選ばれる確率は上がります。
お得感を伝えるなら、「お得」とだけ書くより「単品より○円お得」と金額を入れたほうが伝わります。写真はセット全体を1枚に収めて、何が入っているか一目でわかるようにしてください。
名前も意外と大事です。「Aセット」より「定番唐揚げランチセット」のほうが、中身を想像しやすいですよね。
「3段階」で並べる考え方
セットを3種類作るなら、「ベーシック」「スタンダード」「ボリューム」のように価格帯を分けて並べる方法があります。真ん中をいちばん売りたい構成にして「おすすめ」と添えておけば、迷ったお客様の目印になります。
予約・事前注文と相性がいい
ネットの注文画面では、セットをカテゴリでまとめておくと探しやすくなります。事前決済の予約注文なら受取日時が前もってわかるので、翌日のセットの仕込み量も閉店後の片付けのついでに決められます。
予約受付を仕組みにしたい場合は、OutFood(アウトフード)を使う方法もあります。商品をカテゴリごとに登録して、販売可否や在庫を管理できるので、「脇役が切れたらセットを止める」といった運用もしやすくなります。メールアドレスとパスワードだけで登録でき、Free プランなら月20件まで無料で試せます。
月に1回、数字で見直す
セットは作ったら終わり、ではありません。月に1回、次の3つの数字を確認してみてください。
| 見る数字 | 計算方法 | 確認すること |
|---|---|---|
| 客単価 | 売上 ÷ 注文件数 | セット導入前より上がったか |
| セット比率 | セットの注文数 ÷ 全注文数 | セットが選ばれているか |
| セット別の粗利 | セット価格 − 原価 | 値引きしすぎていないか |
ほとんど売れないセットがあれば、中身・価格・名前・置き場所のどれか1つだけを変えて、翌月もう一度数字を見てください。一度にいくつも変えると、何が効いたのかわからなくなってしまいます。
まとめ
セットがあると、お店のほうから「これも一緒にどうぞ」と提案でき、お客様も迷わず選べるようになります。ついで買いと選びやすさ。単品だけの店との差はここで生まれます。
組み方の基本は「主役 + 脇役 + ドリンク」。主役には、すでに売れている看板商品を据えてください。値付けは原価率ではなく粗利額で判断し、容器代も原価に含めます。値引きは、追加で売れる商品の粗利の範囲に収めることが前提です。
業態によって組み方のコツは変わります。弁当屋は汁物、パン屋は時間帯、ケーキ屋は用途、キッチンカーはシンプルさ。どの業態でも、セットは3つ前後から始めて脇役は共通パーツにし、売り切れたときのルールを先に決めておくと現場が回りやすくなります。メニューではセットをいちばん上に置き、お得な金額を具体的に書く。そして月に1回、客単価・セット比率・粗利を見直します。
まずは今いちばん売れている商品に、仕込み済みの一品とドリンクを足したセットを1つ作ってみてください。小さく始めて、数字を見ながら育てていけば、無理なく客単価を上げていけます。



