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そのパン1個、本当に儲かってる?パン屋の原価計算と利益の出し方

パン屋の原価計算を、材料費の出し方から粉・バター・包材の按分、焼成ロスや売れ残りの織り込み方まで具体的に解説。1個あたりの利益を把握し、儲かる商品と見直すべき商品を見分ける方法がわかります。

そのパン1個、本当に儲かってる?パン屋の原価計算と利益の出し方

そのパン、毎日よく売れているのに、月末に通帳を開くと思ったほどお金が残っていない。そんな覚えはないでしょうか。

パン屋は商品の種類が多く、材料も細かく分かれています。だから値段も「だいたいこのくらい」と感覚で決めてしまいがちです。けれど小麦粉やバターの仕入れ値が上がり続けているいま、感覚のままでは、売れるほど利益が減っていく商品があっても気づけません。

ここでは、配合表から1個あたりの材料費を出すところから始めます。続いて包材や光熱費の扱い、焼成ロスと売れ残りの織り込み方、商品ごとの利益の比べ方へと進みます。電卓かスプレッドシートを手元に置いて、自分の店の数字に置き換えながら読んでみてください。

売れているのに残らない。原価計算をしないパン屋で起きること

パン屋の日常風景

原価計算をしていない店でよく聞くのは、こんな話です。

よく売れるからと作る量を増やしたのに、1個の利益が小さくて手間ばかり増えた。バターや卵の仕入れ値は上がったのに、売価は数年前のまま据え置いている。焼き損じや売れ残りの分が、知らないうちに利益を削っている。そもそも、どれが儲かっていて、どれが足を引っ張っているのか判断がつかない。

パンは1個あたりの単価が小さい商品です。1個で10円の差でも、毎日何十個と積み重なれば、月や年では大きな金額になります。

売上が伸びていても、「1個あたりの利益 × 売れた個数」が増えていなければ、手元にお金は残りません。最初の一歩は、1個ずつの原価を数字にすることです。

1個あたりの材料費を出す手順:配合表から生地1gの単価を計算する

材料計算の手順

パンは1つの生地から何種類もの商品を作ります。パン1個ずつ計算するより、先に生地1gあたりの単価を出し、そこに1個の重さを掛けるほうがずっと手早く済みます。

手順1:材料ごとの「1gあたり単価」を出す

仕入れ価格を内容量で割るだけです。下の価格は、どれも計算例のための仮の数字です。

材料仕入れ例 (仮)1gあたり単価
強力粉25kg で 7,500円0.30円
砂糖1kg で 250円0.25円
塩1kg で 200円0.20円
バター450g で 900円2.00円
卵10個 (約600g) で 300円0.50円
牛乳1L で 250円 (約1,000gとして)0.25円
イースト500g で 1,000円2.00円

送料がかかる仕入れなら、送料込みの金額で割ってください。

手順2:配合表の分量を掛けて「1仕込み分の材料費」を出す

バターロール生地を1仕込みする例で見てみます。

材料分量材料費
強力粉1,000g300.0円
砂糖100g25.0円
塩18g3.6円
バター150g300.0円
卵100g50.0円
牛乳300g75.0円
水200g0円 (水道代は光熱費側で考える)
イースト20g40.0円
合計1,888g793.6円

手順3:「実際に分割できた生地量」で割る

見落としやすいのがここです。仕込み量は1,888gでも、ミキサーやボウルに生地が残るので、実際に分割できる量は少し減ります。

仮に分割できた生地が1,850gだったとすると、

793.6円 ÷ 1,850g ≒ 0.43円/g

これが、この生地1gあたりの単価になります。

焼成すると水分が抜けて重さが減る点にも気をつけてください。計算に使うのは焼き上がりの重さではなく、分割したときの重さです。

手順4:1個の分割重量を掛け、フィリングやトッピングを足す

  • バターロール (生地40g):40g × 0.43円 ≒ 約17円
  • あんパン (生地50g + こしあん40g + けしの実)
    • 生地:50g × 0.43円 ≒ 21.5円
    • こしあん:40g × 0.8円 (1kg 800円の場合) = 32円
    • けしの実:約1円
    • 合計 ≒ 約55円

同じ生地を使う商品なら、重さとフィリングを入れ替えるだけで次々に計算できます。生地の種類ごとに1gあたり単価を一度出しておけば、新商品を考えたときも原価はすぐわかります。

包材・打ち粉・光熱費・人件費はどう割り振るか。見落としがちなコストの扱い方

コスト管理の風景

材料費だけで計算を終えると、利益を実際より多く見積もってしまいます。かといって、すべてを1個ずつに割り振ろうとすると計算が複雑になり、まず続きません。おすすめは「1個ごとにかかる費用」と「店全体にかかる費用」を分けて考えるやり方です。

1個ごとに足すもの:包材・消耗品

費用考え方計算例 (仮)
個包装の袋・シール1個に使う分をそのまま足す袋4円 + シール1円 = 5円
トレー・箱使う商品だけに足すデニッシュ用トレー 10円
打ち粉・離型油・塗り卵など月の購入額 ÷ 月の製造個数月6,000円 ÷ 6,000個 = 1円

打ち粉や塗り卵は、1個ずつ量るわけにいきません。月の購入額を製造個数で割って平均を出せば、それで十分です。

店全体で考えるもの:光熱費・家賃・人件費

オーブンの電気代やガス代、家賃、人件費は、パンを何個作っても大きくは変わりません。こうした固定費は、1個ずつに割り振るより、店全体で回収できているかを見るほうが実用的です。

考え方はシンプルです。

月の固定費 ÷ 1個あたりの平均粗利 = 月に売る必要がある個数

※粗利 = 売価 − (材料費 + 包材などの1個ごとの費用)

たとえば月の固定費が30万円、1個あたりの平均粗利が150円なら、30万円 ÷ 150円で月2,000個。月25日営業なら、1日80個売ってようやくトントンです。この「1日に必要な個数」が頭に入っていると、製造数や営業時間を決めるときの目安になります。

固定費には、オーナー自身の生活費にあたる給料も入れておいてください。ここを0円にしてしまうと、帳簿は黒字なのに生活が苦しい、ということになりがちです。

手間の差は「作業時間 × 時給」で比べる

人件費は固定費とはいえ、商品ごとの手間の差は無視できません。折り込みや成形に時間がかかる商品は、そのぶんほかの商品を作る時間を奪っているからです。

比べたいときは、1個あたりの作業時間に時給を掛けてみます (仮の数字です)。

  • バターロール:1個あたり約1分 × 時給換算1,200円 ≒ 20円
  • フルーツデニッシュ:1個あたり約3分 × 時給換算1,200円 ≒ 60円

毎回計算するほどのものではありません。商品構成を見直すときの判断材料として使えば十分です。

焼成ロスと売れ残りを原価に織り込む考え方

焼成の様子

パン屋の原価計算でいちばん差が出るのがロスです。焼き色のムラや形くずれで店頭に出せなかったパン、閉店時に棚に残ったパン。どちらも材料費をかけたのに売上にはなりません。

「作った個数」ではなく「売れた個数」で割る

ロスを織り込むには、原価を「売れた割合」で割ります。

ロス込み原価 = 1個の原価 ÷ (1 − ロス率)

100個作って90個売れた (ロス率10%) なら、100個分の原価を90個で負担している計算です。

1個の原価ロス率ロス込み原価
30円10%30 ÷ 0.9 ≒ 33.3円
60円10%60 ÷ 0.9 ≒ 66.7円
160円20%160 ÷ 0.8 = 200円

原価の高い商品ほど、ロスの影響が大きく出るのがわかります。

ロス率は商品ごとに記録する

ロス率は、商品ごとの製造数と販売数を1〜2週間メモするだけで出せます。閉店後の片付けのついでに数えておけば、手間もそれほどかかりません。

このとき、焼成ロスと売れ残りを分けて書いておくと原因が見えてきます。焼成ロスが多いなら、成形・発酵・焼成のどこかに見直す余地があります。売れ残りが多いなら、製造数や焼き上がりの時間を見直す番です。

売れ残りをラスクやパン粉に回しているなら、その売上の分だけロスは小さくなります。ただ、転用にも手間と材料がかかります。捨てずに済んだからといってロスゼロになったわけではない、という点は覚えておいてください。売れ残りの扱いや再加工品の販売については、衛生面のルールを保健所に確認しておくと安心です。

予約注文でロスを減らす

売れ残りを減らすいちばん確実な方法は、作る前に売れる数がわかっていることです。食パンやホールケーキ、まとめ買いの多い商品は、前日までの予約を受け付けると製造数を合わせやすくなります。

ただ、電話やメッセージで予約を受けていると、聞き間違いや、受け取りに来ないお客様が気になるもの。予約受付を仕組みにしてしまいたいなら、OutFood のような予約注文システムを使う手があります。受取日時の枠を設定しておけば、お客様が日時を選び、事前決済で注文してくれます。Free プランなら月20件まで無料で、クレジットカード登録なしで始められます。

商品別の利益を一覧にして、儲かるパンと見直すパンを見分ける

1個ずつの原価が出たら、主力商品を1枚の表に並べてみます。下は主力5品を抜き出した計算例で、数字はすべて仮のものです。売価は消費税を除いた金額で計算しています。

商品売価 (税抜)原価 (材料+包材)ロス率ロス込み原価原価率1個の粗利月の販売数月の粗利
食パン (1斤)400円100円10%111.1円27.8%288.9円200約57,800円
バターロール140円20円10%22.2円15.9%117.8円600約70,700円
あんパン200円60円10%66.7円33.3%133.3円400約53,300円
カレーパン260円91円15%107.1円41.2%152.9円300約45,900円
フルーツデニッシュ380円160円20%200.0円52.6%180.0円60約10,800円

「原価率」だけで判断しない

表のなかで原価率がいちばん低いのはバターロールです。ところが1個の粗利はいちばん小さく、600個売ってやっと月7万円ほどにしかなっていません。

反対に、フルーツデニッシュは原価率が50%を超えています。それでも1個の粗利は180円あり、バターロールより大きいのです。

原価率は「割合」、粗利は「手元に残る金額」。片方だけ見ていると判断を誤ります。

4つのタイプに分けて考える

「1個の粗利」と「月の販売数」の2つの軸で分けてみると、それぞれに何をすればいいかが見えてきます。

タイプ特徴例打ち手
看板商品粗利が大きく、よく売れる食パン欠品させない。予約で確実に売る
集客商品粗利は小さいが、よく売れるバターロール手間を増やさず、まとめ売りで客単価を上げる
育てる商品粗利は大きいが、販売数が少ないカレーパン焼き上がり時間の告知や陳列で販売数を伸ばす
見直す商品原価率・ロス率・手間がすべて大きいフルーツデニッシュ下の見直し策を検討する

見直す商品の打ち手

すぐに棚から外す前に、次の順で考えてみてください。

  1. 製造数を減らす:ロス率20%を10%にするだけで、ロス込み原価は200円から約178円に下がる
  2. サイズや具材を調整する:フルーツの量や種類を変える、季節の手頃な果物に替える
  3. 売価を見直す:原価と手間に見合う価格にする
  4. 予約限定や曜日限定にする:作る日と数を絞って、ロスと手間を抑える
  5. それでも合わなければ廃止:空いた時間を看板商品や育てる商品に回す

とはいえ、店の「顔」になっている商品なら、利益が小さくても置いておく価値はあります。数字は判断材料であって、答えそのものではありません。最後は店のコンセプトと照らし合わせて決めてください。

原価計算を続けるコツ:仕入れ値が変わったときの更新ルール

原価計算は一度やれば終わり、というものではありません。仕入れ値は動き続けます。だからこそ、最初に更新しやすい形を作っておくことが、続けられるかどうかの分かれ目になります。

スプレッドシートは「材料マスタ」と「配合表」に分ける

まず材料マスタとして、材料名・仕入れ価格・内容量・1gあたり単価を1か所にまとめます。配合表には生地ごとの分量だけを入力し、単価は材料マスタから自動で引いてくるようにします。さらに商品一覧のシートで、生地の重さ・フィリング・包材・ロス率から原価と粗利が自動で計算されるようにしておきます。

こうしておけば、バターの仕入れ値を1か所書き換えるだけで、バターを使う全商品の原価が一度に更新されます。

更新のタイミングをルールにする

「気づいたら直す」では、忙しい時期にまず止まります。たとえば次のように決めておくと続けやすくなります。

  • 主要材料 (粉・バター・卵・乳製品) の仕入れ値が変わったら、その日に材料マスタを更新
  • 月1回、請求書を見ながら全材料の単価をチェック
  • 3か月に1回、ロス率と販売数を記録し直して商品一覧を見直す

値上げを考える基準も決めておく

「原価率が◯%を超えたら売価を見直す」「1個の粗利が◯円を下回ったら検討する」。こうした自分の店なりの基準があれば、値上げのたびに迷わずに済みます。基準の数字は価格帯や客層によって変わるので、まずはいまの一覧表に出た数字を出発点にしてみてください。

売価に消費税をどう含めるか、軽減税率をどう扱うかといった税金まわりは、税理士などの専門家に確認しておくと安心です。

まとめ

パン1個の利益は、感覚ではなく数字で見て、初めて正確にわかります。

材料費は、配合表の材料費合計を実際に分割できた生地量で割り、生地1gあたりの単価として出します。包材や消耗品は1個ごとに足し、光熱費・家賃・人件費は固定費として店全体で見る。「月の固定費 ÷ 平均粗利」で、1日に売るべき個数もわかります。

ロスは「原価 ÷ (1 − ロス率)」で織り込み、そのために商品ごとの製造数と販売数を記録しておきます。商品を比べるときは原価率と1個の粗利の両方を見て、看板・集客・育てる・見直すの4タイプに分けて打ち手を考えてください。そして更新ルールを決め、材料マスタを1か所直せば全商品の原価が変わる仕組みにしておけば、無理なく続けられます。

まずは主力の5品だけでかまいません。今週中に、1個あたりの原価と粗利を出してみてください。

#パン屋#原価計算#原価率#利益#価格設定

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